必殺仕事人 2007

小判写真 所詮、金は天下の廻りもの
ところがどっこい近頃は、天下が金の廻しもの
金さえありゃとは申しませんが
情けがありゃとも申せません
きれいごとばかりじゃ〜とどの詰まりの堂々巡り
どうやら、どの世に生まれても
こいつだけわぁ〜許せねぇ〜てな輩がおりますもので
(春風亭小朝師匠ナレーションより)


「必殺仕事人〜中村主水」藤田まことイラスト 文政三年二月十四日
南町奉行所と厳かに書かれた看板を「ぱん」と一叩きして奉行所内に入っていく同心一人。
そう我らが定町廻同心・中村主水である。看板に一度手をかざし、そして一叩き・・・主水のいつもと変わらぬ出仕風景でございます。そして四十年間、定町廻りとして勤めてきた主水の職場替えの日、書庫番の任に就く日でもございました。南町奉行所の鬼門にあたり、冬は隙間風、夏は西日がぎんぎんの愛着ある席には、すでに後任の同心が座っておりました。名を渡辺小五郎、お香の匂いを黒羽織にしみ込ませ飄々とした受け答えの小五郎のことを「物好きなやつ」と呟きますが、もしかして香の匂いとは別の、自分と同じ「血」の匂いを嗅ぎとったのかもしれません。そう、「仕事人」としての同じ匂いでございます。

「火事〜火の見櫓」イラスト ある夜、激しく半鐘が鳴り響きます。江戸で一二を争う米問屋の上総屋から火の手が上がります。瞬く間に大火事となり、奉行所にも出動命令がでます。同僚の同心・大河原伝七に急かされながら渋々出動する小五郎。その頃、燃えさかる火の中を上総屋の末娘の佐知が必死に母を助けようとしますが、「これを何かの足しに、お春を助けて」と姉のお春が賊に連れ去られたとの言葉と小判を佐知に渡し、火に包まれてしまいます。誰かれかまわずに姉の助けを求める佐知に声をかけて来た男がおりました。上総屋夫婦に手をかけ、火付けし、千両箱を盗みださせた播磨屋藤左衛門の手の者でした。佐知の口を塞ごうとしますが、ちょうどその場に伝七と小五郎が通りかかります。同心に見つかり逃げる男を追う伝七。そして佐知は小五郎に小判を渡し姉の助けを求めますが「こんなものをこんな処でだすもんじゃねぇ」と一旦番所に連れていきますが、佐知は思い詰めた様子で走り去ります。佐知は川に身を投げようとしますが、その時、暗闇から女の声がします「仇をとりたかったら、三番筋の尼寺へ」と。
一輪の椿を手に佐知は尼寺に向かいます。草履の上に六枚の小判をのせて目を閉じ「一つ二つ」と数を数える佐知、そして、そっと小判を抜く手・・・しかし抜かれたのは血で汚れた四枚の小判だけでした。汚れてない小判は・・・そのまま佐知のもとに。

奉行所に戻ろうとする小五郎の耳に届く鈴の音、そして同じくその音を鳴らしながら女が経師屋の涼次のもとに現れる・・・「仕事だよ」と。

播磨屋では、勘定所役人の浅倉忠次郎がお春を手込めにしようとしますが、天井裏から滴りおちる「画竜点睛」・・・仕事人涼司が浅倉を仕留めるます。そして藤左衛門の前には、縛られ手に匕首を握らされた留が、そしてその背後に現れる渡辺小五郎、「てめぇ〜んとこの若いのは口が軽いな、てめぇ〜の命はたったの二両だ」といい、留の肩を押し、握られた匕首は播磨屋の急所をさします。浅倉といた部屋から逃げ出すお春を用心棒たちが追おうとした時、小五郎に気づき斬り掛かってきますが、小五郎はバッサバッサと撫で斬りにし、最後の一人を斬り終えると素早く懐紙で血を拭い刀を鞘に納めます。その時、同じく仕事を終えた涼次が小五郎と対峙しますが、仕事の依頼を受けた女・お菊がおさめます。

霧雨の中、仕事を終えた小五郎、傘をさし向かって歩いてくる自分と同じ黒羽織の同心、小五郎はスッと道を譲ります。 「お見事でしたな、一刀流免許皆伝の腕前。返り血を浴びた袂は、いつも御自分で濯ってお帰りになるんで」その言葉を聞いた途端、小五郎は抜刀しますが、男もまた抜き打ち二人の刃は交差しますが、男はすでに刀を鞘に納めています。浮かび上がった男の顔は中村主水、仕事人、中村主水でございます。 「なかなか来ないものですな、仕事人のいらない世の中」仕事人として闇の世界に生きてきた主水の言葉が響くのです。

「必殺仕事人〜渡辺小五郎」東山紀之イラスト 小五郎の生活は、主水と同じく婿養子としての義母のこうと嫁のふくに頭の上がらぬ生活でございます。 これはこれで楽な生き方のようでございまして、仕事にかこつけての芝居見物も楽しんでいる小五郎でございます。 その小五郎が気にかけている若者でからくり屋の源太は、作太郎の母親の薫に恋心を抱いておりますが、薫には「夫の仇を取る」という決意があり、源太の想いを素直に受け入れることができません。そしてついに薫は見つけます仇である加賀谷玄衛門を。

追うものを見つけた・・・それは涼次にも降りかかります。涼次は伊賀の抜け忍、同じく伊賀の忍びの玉櫛らが彼を追っていました。涼次を見つけた玉櫛ですが、実は自分も伊賀に裏切られていたことに気づき仲間を片付けます。

薫の夫の仇である加賀谷玄衛門は、父の彦左守衛門とともに上方からの豪商らに地上げし手に入れた土地を売ることで膨大な利益を手にしておりました。そしてその加賀谷に力を貸していたのが、南町奉行所筆頭与力の鳥山景意だったのです。
お菊は前に受けた仕事に加賀谷と鳥山が関わっていることを不審に思い、昔なじみの主水に相談します。
その頃、薫は加賀谷に女中として入り込むのです・・・夫の仇をとるために。
皆が寝静まり、薫は夫の差し添えを手に玄衛門の部屋に忍び込みますが、察知していた玄衛門によって追いつめられ、そして自ら喉を切り果てます。

翌日、身元不明の水死体が上がり、筆頭同心の坂本勘助の命令で小五郎と伝七が検分にいきますが、その女が薫であることに驚く小五郎、そして泣き叫ぶ作太郎と嗚咽する源太。その姿に心を動かされたお菊は、涼次を使って加賀谷に探りを入れる。小五郎が加賀谷に薫のことで目をつけたらしいとのことをしらされた鳥山は小五郎を呼び出し、口止めの金子の小判数枚を差し出す。それを受け取り部屋を出る小五郎、「正体を現しやがったな」と呟きながら。

作太郎は母から託されていた文銭を手に三番筋の尼寺に行き、「母の仇を取ってください」と懇願する。その姿を見ていた源太は居たたまれずに去ろうとするが「依頼人の話は最後まできくもんだ」と肩に手を置く中村主水、作太郎の置いていった銭を拾えという涼次、そしてもう一人、見知った顔の同心が・・・「俺たちは、仕事人だ」渡辺小五郎が源太の前に現れます。小五郎は主水に鳥山から口止め料として受け取った小判を差し出します。「鳥山が、自分を仕事にかけてくれ・・・と渡された仕事料です」と。
そして、その小判を一枚引き抜き「じゃ、お先に」と去る主水、それにつづく涼次・・・
いざ、仕事人出陣の時でございます。

暗闇の中、屋根にひらりと飛び上がり加賀谷に入り込む涼次、そして源太を引き入れる。自分が描いた屏風に身を隠し、そして寝床についた玄衛門を仕事にかけます。からくり人形に目を取られる大番頭、飛び道具を使いその男の喉元を貫き、仕留める源太。

南町奉行所では、地上げのため、長屋を追い出されることに抗議する民衆の暴動があるとの情報を受け、出動に出払う役人たち。皆が出払ったあと、奉行所の門を閉ざす中村主水、そして暗がりに姿を現す鉢金を巻いた渡辺小五郎。小五郎は主水に会釈をし、主水は片手を上げて「お疲れ」とばかりの笑みを浮かべ・・・仕事にかける相手のところに向かう。女と床入りしようとする男に背後から忍び寄り・・・「ゆっくり寝かしてやろうじゃねぇ〜か」と囁き、脇差しで刺す主水。

そして小五郎は奉行所に残った鳥山のもとへ。
「出立の御支度を」と割腹の衣装を鳥山に差し出します。激怒する鳥山が小五郎に向かって刀を振り落とそうとしますが、その刀を受け「仕事人、渡辺小五郎」と名乗ると同時に鳥山の刀を巻き落とし払い上げる。鳥山の大刀は天井に突き刺さるが、それでも小五郎を狙って脇差しを抜こうとするが、小五郎はその柄を一旦左手で押さえ、そして抜き、鳥山の腹に突き立て「見事な御割腹でございます」と横に引く。

渡辺小五郎の見事な仕事でございました。

翌朝、いつもと変わらぬ渡辺家の朝餉、何品もあるおかずを見て小五郎は疑問を投げかけます。中村家で習った料理の残飯整理ではないですか?と

必殺仕事人2007〜キャスト

中村主水(藤田まこと) 渡辺小五郎(東山紀之)
経師屋の涼次(松岡昌宏) からくり屋の源太(大倉忠義)
花御殿のお菊(和久井映見) 玉櫛(水川あさみ)
大河原伝七(福士誠治) 坂本勘助(宇梶剛士)
薫(原沙知絵) 作太郎(前田航基)
佐知(星野真里) お春(中野若菜)
播磨屋藤左衛門(河原さぶ) 浅倉忠次郎(浜田晃)
渡辺こう(野際陽子) 渡辺ふく(中越典子)
中村せん(菅井きん) 中村りつ(白木真理)
加賀谷彦左守衛門(石橋蓮司) 加賀谷玄衛門(佐野史郎)
鳥山景意(伊武雅刀)